田んぼのあぜ道を自転車ではしって

 ようやく秋がやってきそうな気配があります。だいぶ前から夜になると秋の虫の声がきこえていたものの、日中は暑い日が続いていました。

 長い梅雨があけて、やっとお日さまに会えた!と喜んだのも束の間、連日の猛暑で、バテバテの夏でした。若いときは暑くても活動ができたのに、今年の夏は特にだめで、すこし外で作業しただけでふらふらするので、困ってしまいました。

 このところは、午前中はなんとか作業を休み休みやって、午後はおやすみしていました。それが昨日は、子どもたちとお昼寝してから、午後は外で遊べるほどになって。お友だちと一緒に、田んぼのあぜ道を自転車乗りしにいきました。

 我が家のある集落は坂道ばかりなので、自転車に乗れる場所がすくなくて、自転車のりはちょっとしたお楽しみです。田んぼは稲刈りを始めた家もちらほらあって、黄金色に実った稲と、はぜかけされた稲と。だんだんになった田んぼ、あぜ道にはコスモスも咲いて、本当にきれいだなぁ、うれしいなぁ、と思いながら、子どもたちの後ろをついて歩きました。

 あぜ道を散歩しながら、ふとこの頃出合った本のことを思い出しました。ハーバルノートの荻尾エリ子さんの「八ヶ岳の食卓」。長野の茅野で暮らす萩尾さんの、日常の生活、その中の気づき、それからおいしそうで試したくなるレシピが、やさしい言葉でつづられています。

 気持ちが暗くなるニュースの多い中で、文章からあふれてくる萩尾さんのやさしさがううれしくて。会って少しお話しただけで「なんていい人なんだろう」と思う人がいますが(心のなかで勝手に「菩薩さま」とよんでいます)、ページをめくってちょっと読んだだけでそんな気持ちになる本で、いまの私にやさしく語りかけてくれました。

 暑さでバテて、なにもできない自分にいらいらする日も多かったのです。そんな中でこの本を、こんな風に日常を愛して、気持ちよく暮らせたら素敵だなぁ、と思いながら読んでいたのですが、田んぼで自転車をのる子どもたちの後姿を見送りながら、景色と子どもたちが本当に美しくて…とてもいい日になりました。